「ヒアルロニダーゼ」って何? 〜ヒアルロン酸溶かすの、簡単じゃないんです〜
美容医療の世界では、ヒアルロン酸注入はもはや定番の治療になっています。
しかし、「他院での治療が思ったような仕上がりにならなかった」「過去に入れたヒアルロン酸が残っていて不自然」といった理由で、“ヒアルロン酸を溶かしたい”という相談を受けることもあります。
そんなときに登場するのが、ヒアルロニダーゼという薬剤です。
ヒアルロニダーゼとは?
ヒアルロニダーゼとは、ヒアルロン酸を分解するための酵素です。
簡単に言うと「ヒアルロン酸を溶かす薬」ですが、その扱いは決して簡単ではありません。
「失敗しても溶かせばいい」
そう思ってしまいそうですが、それはとても危険な考え方です。
溶かすことのリスク
ヒアルロン酸は顔の中に注入されるため、外から見て正確な位置を把握することはできません。
そのため、どこにどれだけ入っているかを100%把握して、狙った分だけを溶かすというのは非常に難しいのです。
さらに、ヒアルロニダーゼは人工的なフィルターのように選別してくれるわけではありません。
分解のターゲットを選べないので、「元々体内にあったヒアルロン酸」まで分解してしまう可能性があります。
これにより、肌のハリや保水力に影響が出てしまうことも。
また、ヒアルロニダーゼ自体にアレルギー反応を起こすリスクもあります。
使用前には必ずパッチテストを行うべきですが、100%安全とは言い切れません。
ヒアルロニダーゼにも種類がある
ヒアルロニダーゼには人由来、羊由来、牛由来などの種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
- ・人由来:アレルギーのリスクが最も少ないが、コストが高い
- ・羊由来・牛由来:比較的安価だが、アレルギーリスクが高い
(当院では緊急時のために人由来のものと羊由来のもの2種類を置いております。)
どのタイプを使うかは、医師がリスクや効果を踏まえて慎重に判断する必要があります。
製剤によっても“溶けやすさ”が違う
ヒアルロン酸製剤には、架橋の有無や程度によって分解されやすさに差があります。
硬い製剤や架橋の多い製剤は、ヒアルロニダーゼでも溶けにくいことがあります。
つまり、すべてのヒアルロン酸が「一瞬で」「きれいに」溶けるわけではないということ。
また、遅発性有害事象や塞栓の際は通常とは違います。広範囲に飛び散っていたり、硬くなり溶けにくかったりもします。
知識と技術が不可欠な治療
ヒアルロニダーゼを扱うには、製剤ごとの特性、解剖学的な知識、副作用への対応、適切な量の調整など、あらゆる面での経験と判断力が求められます。
例えば、ヒアルロン酸注入による動脈塞栓などの重大な合併症が起きた場合、ヒアルロニダーゼは命を守る「解毒剤」のような役割を果たします。
しかし、この救急的な使い方を正しく理解していない医師がいるのも事実です。
「溶かせるから大丈夫」と思わないで
ヒアルロニダーゼは、確かにヒアルロン酸注入における強力な“保険”ではありますが、それを前提にして治療を選ぶのは本末転倒です。
「失敗しても溶かせばいい」と安易に考えるのではなく、最初の注入時点でどれだけ丁寧に計画し、信頼できる医師に任せるかが最も大切です。
まとめ
ヒアルロニダーゼは非常に有用な薬剤ですが、その一方でリスクも大きく、安易な使用はおすすめできません。
本当に必要なときに、安全に使えるようにするためにも、「溶かせばいい」ではなく、「溶かさなくてもいい治療を目指す」ことが、私たち医師の役割だと思っています。
★たがやクリニック 注入治療(ヒアルロン酸、ボトックス®︎)専門、内科併設
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