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【CKDとたばこ】腎臓を守るために知っておきたい喫煙の影響|日進市・長久手市・みよし市・東郷町

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【CKDとたばこ】腎臓を守るために知っておきたい喫煙の影響|日進市・長久手市・みよし市・東郷町

 

腎臓とたばこは関係ある?

慢性腎臓病(CKD)は、日本では成人の約5人に1人が罹患しているとされる身近な疾患です。
高血圧や糖尿病と並び、喫煙(たばこ)はCKDの進行を早めるリスク因子の一つとして注目されています。
「腎臓とたばこは関係あるの?」と思われる方も多いかもしれませんが、腎臓内科医の立場から見ると、その関係は決して軽視できません。

 

 喫煙が腎臓に与える影響

 1)血管を傷つける

たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は、全身の血管を収縮させ、慢性的な血流障害を引き起こします。
腎臓は「血液を濾過する臓器」であり、微細な血管(糸球体)が密集しているため、喫煙による血管障害の影響を強く受けやすいのです。

 2)酸化ストレスと炎症反応の亢進

喫煙により体内の酸化ストレスが増加し、腎臓の細胞障害や炎症を促進します。これが長期的に腎機能の低下へとつながります。

 3)高血圧・動脈硬化を介した悪化

喫煙は交感神経を刺激し、血圧上昇や動脈硬化を進めます。
結果として腎臓への負担が増し、高血圧性腎障害糖尿病性腎症の悪化を招くことがあります。

 

 エビデンスから見る喫煙とCKDの関係

 CKD診療ガイドラインでの位置づけ

日本腎臓学会の『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018』では、

「CKD患者の禁煙はCKD進行、心血管疾患(CVD)の発症および死亡リスクを抑制するために推奨される(推奨B1)」

と明記されています。

この推奨は、観察研究での一貫した結果をもとにしています。
喫煙者は非喫煙者に比べてCKDの発症・進展リスクが高く、また喫煙本数が多いほどリスクが上がる「量反応関係」も認められています。

 

 禁煙で腎臓は守れる?――韓国での大規模研究

2021年に発表された韓国のコホート研究(Lee S, Nicotine & Tobacco Research, 2021)では、
平均糸球体濾過量(eGFR)約53 mL/分/1.73m²の早期CKD患者を対象に喫煙歴と腎機能悪化リスクを比較しました。

  • ・禁煙期間10年未満:末期腎不全(ESKD)リスク 1.84倍

  • ・禁煙期間10〜19年:1.44倍

  • ・禁煙期間20年以上:1.35倍

という結果で、10年以上の禁煙によってCKD進行リスクが軽減される可能性が示されました。
これは「禁煙による腎機能保護効果は時間をかけて現れる」ことを意味しています。

 

 禁煙の介入効果 ― 現時点での限界と課題

現時点では「禁煙介入がCKD進行を止める」ことを直接証明した臨床試験は存在しません。
禁煙支援はしばしば「食事療法・運動療法」と同時に行われるため、禁煙単独の効果を厳密に検証することが難しいのです。
しかし、喫煙が腎臓・心血管に有害であること、そして禁煙が全身の健康を守ることには異論がありません。
したがって、CKDの進行抑制・CVD予防のために禁煙は強く推奨されます。

 

 禁煙のポイント

 1)禁煙外来を活用する

ニコチン依存は意志の力だけでは克服が難しい場合があります。禁煙補助薬(ニコチンパッチ、バレニクリンなど)を組み合わせた医療的サポートが効果的です。

 2)禁煙の「きっかけ」は腎臓保護

CKD患者さんは「もう腎臓が弱っているから関係ない」と感じることがありますが、
腎機能は残されたネフロンを守ることが大切です。喫煙をやめることで、残っている腎臓へのダメージを軽減できます。

 3)家族・周囲の協力

受動喫煙も腎臓に悪影響を及ぼします。家庭内での禁煙環境づくりが、患者さん本人だけでなく家族の健康にもつながります。

 

 日進市のたがやクリニックへご相談ください

喫煙はCKDの進行を促進し、心血管疾患や死亡リスクを高めます。
禁煙の効果はすぐには現れませんが、10年以上の禁煙で腎臓を守れる可能性があるという報告があります。
腎臓病治療の一環として、禁煙は非常に重要な柱の一つです。
たがやクリニックでは、腎臓専門医による生活指導も行っています。お気軽にご相談ください。

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