ヒアルロン酸の合併症である「動脈塞栓」って何?
「ヒアルロン酸って安全ですか?」
カウンセリングの中で、こうしたご質問をいただくことがあります。
ヒアルロン酸注入は、正しく行えば非常に安全性の高い治療ですが、それでも“ゼロリスク”ではありません。
中でも、医師・患者さんともに最も気をつけている重大な合併症のひとつが 動脈塞栓です。
【動脈塞栓って何が起きるの?】
その名の通り、ヒアルロン酸が誤って動脈の中に入ってしまい、血流が止まってしまう状態です。
血液が流れなくなると、その先にある皮膚や組織に酸素が届かず、時間が経つと壊死(組織が死んでしまう)するリスクがあります。
【主な症状として】
- ・皮膚の青白さ(蒼白)
- ・強い痛み(ただし、無痛のこともあります)
- ・時間とともに皮膚の色が紫色に変化
- ・数日後に白っぽい膿のようなものが出てくることも
- ・重症例では脱毛や皮膚欠損
- ・非常にまれですが、失明の可能性も…
【なぜ起きるの?予防できないの?】
血管は皮膚の表面からは見えません。ですから、
「どこに血管があるのか」を熟知しておくこと、
「どの深さ・角度に注入するか」を正しく判断すること、
「圧力をかけすぎないように」など、
医師は細心の注意を払いながら注入しています。
また、リスクを下げるために
- ・カニューレを正しく使用する(正しくがポイント。重症塞栓はカニューレの報告の方が多いです)
- ・意味のある吸引確認を行う(製剤や針の種類により吸引時間が異なります)
- ・高リスク部位では低圧・少量で注入する
など、さまざまな工夫をしています。
ですが、どれだけ対策をしていても100%防げるものではない、というのが医療の現実です。
だからこそ、「起きたときにどう対処するか」が極めて重要になります。
【万が一、動脈塞栓が起きたらどうなる?】
塞栓が起きた瞬間は、皮膚が青白くなることが多く、時間とともに
- ・強い痛み(または違和感)
- ・皮膚の色の変化(紫→黒っぽく)
- ・膿のようなもの
などが見られます。
とくに中等度以上の塞栓では、2〜3日で白く濁った膿瘍ができてくることもあります。
【治療はどうするの?】
最も重要なのは「早期発見と即座の治療」です。
(特に視力障害(失明)の可能性があるケースでは90分以内のレスキューが理想とされていますが、これは現実には非常に難しいのが実情です。)
治療の中心は、「ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を分解する薬)」の大量注入です。
- ・塞栓が疑われたら、すぐにヒアルロニダーゼを注入
- ・状況を見ながら1時間ごとに追加注入
- ・色味の改善が見られるまで続ける
- ・時には15000単位〜30000単位以上の使用も必要になることがあります
- ・状況によっては7日目くらいまで継続して注入します
※使用するヒアルロン酸製剤によっては「溶けにくいもの」もあり、使用量や反応のスピードにも差が出てきます。
【諦めないことも大切】
私自身もこれまでに、治療開始が遅れてしまった症例を何例か相談され見てきました。
それでも、「遅れたからもうダメ」ということではありません。
できる限りの処置を行うことで、ある程度の回復が見られたケースもあります。
【最後に】
動脈塞栓は、とても怖い合併症です。
だからこそ、正しい知識と経験、そして適切な対応がとても大切です。
ヒアルロン酸治療を受ける際は、
「どんな製剤を使うか」よりも「誰に任せるか」が重要です。
また、施術をする前にリスクについてしっかり考えることも重要です。
私たち医師も、
いい治療だからこそ、このリスクを最小限にするために日々勉強を重ね、
起きてしまったときにも迅速に対応できるよう準備しています。
ご不安なことがあれば、いつでもカウンセリングでご相談くださいね。(※当院はカウンセリングは無料です)
★たがやクリニック 注入治療(ヒアルロン酸、ボトックス®︎)専門、内科併設
愛知県日進市米野木台5丁目108番(米野木駅から徒歩7分、駐車場17台)